民泊ビジネス入門 – 初心者が成功するための手順とポイント

民泊事業とは

  1. 民泊事業とは

民泊事業とは、民家やアパート、マンションなどの住宅を一時的に宿泊施設として提供するビジネスモデルのことを指します。通常、短期滞在者向けに、1泊から数週間の宿泊サービスを提供します。民泊は、ホテルや旅館とは異なり、個人や家族が利用できる住宅空間を提供することで、よりリラックスした滞在を可能にします。

民泊事業は、訪日外国人観光客の増加や、国内旅行者のニーズの多様化に伴い、近年ますます注目を集めています。特に、訪日外国人観光客は、日本の文化や生活を間近に感じることができる民泊に大変興味を持っており、その需要は高まっています。

民泊事業には、大きく分けて2つのタイプがあります。1つ目は、自宅や別荘など、自分が所有する物件を利用するタイプです。これにより、空き部屋や空き家を有効活用して収益を上げることができます。2つ目は、投資目的で物件を購入し、民泊として運営するタイプです。これにより、物件の価値上昇や安定した収益を期待することができます。

しかし、民泊事業は法的な規制もありますので、始める前に法律や手続きについて十分に理解しておくことが重要です。2018年6月に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)によって、民泊事業がより明確な法的枠組みのもとで行われるようになりました。この法律に従って適切な手続きを行い、安全で快適な宿泊環境を提供することが求められます。

民泊の種類

現在日本国内の民泊ビジネスは以下の3つの種類があります。

  • 旅館業民泊(簡易宿所)
  • 特区民泊
  • 新法民泊

3つの民泊の違いを解説いたします。

旅館業民泊(簡易宿所)

まずはいわゆる旅館業法(昭和23年法律第138号)にのっとって民泊を行う方法です。

旅館業には以下の4種類の営業形態があり、民泊はこの中の簡易宿泊営業に該当します。

  • ホテル営業
  • 旅館営業
  • 簡易宿所営業
  • 下宿営業

簡易宿所営業
 宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業である。例えばベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステルの他カプセルホテルが該当する。

旅館業法概要/厚生労働省

旅館業で行うのが他の方法に比べて運営上の制約が少なくおすすめではありますが、旅館業で行う為には宿泊施設の用途地域が旅館業を行える地域で無ければなりません。旅館業法に基づく許可を受ける際、地域に関する制約が存在することに留意する必要があります。

旅館業法の許可が下りる地域は主に以下の2つに分けられます。

  1. 旅館業地域 これは、市区町村が宿泊施設を営業するために指定した地域で、旅館業法に基づく許可を受けることができます。旅館業地域では、ホテルや旅館などの宿泊施設が集まっていることが一般的です。
  2. その他の地域 旅館業地域以外の地域でも、一定の条件を満たすことで旅館業法に基づく許可を受けることができます。ただし、この場合、用途地域や建築基準法などの規制に従って運営する必要があります。

たとえば、住宅地域や商業地域では、建築基準法によって建物の用途や規模に制限がかけられることがあります。そのため、民泊事業を始める前に、物件が所在する地域の法的制約を確認し、適切な手続きを行うことが重要です。

旅館業法で実施する民泊には年間営業日数に制限がありませんので、365日営業できるため稼働率を上げればより高い収益を見込めます。

以前の旅館業法では、要件が厳しく旅館業法に則って民泊を開始するのは容易ではありませんでした。しかし、2018年6月に施行された民泊新法にあわせ、旅館業法の規制も緩和され、より旅館業法での民泊営業が容易になりました。

改正された内容は以下の通りです。

  • 最低客室数の廃止
  • 洋室の構造設備要件の廃止
  • 便所の設置数規制の廃止
  • 玄関帳場の規制の緩和
  • 建物の構造設備の基準の緩和

旅館業登録の申請は保健所に提出になります。保健所で許可がおりる物件かどうかを確認してから計画を立てることをお勧めします。保健所に申請を出す際には、事前に役所の建築指導課、開発審査課で建築基準や建築許可、設備などの登録要件を満たしているかどうか確認が必要です。
いきなり保健所に申請書を出しても受け付けてもらえませんので注意してください。

旅館業法に基づいて民泊運営が行える用途地域

用途地域名民泊営業の不可
第1種低層住居専用地域不可
第2種低層住居専用地域不可
第1種中高層住居専用地域不可
第2種中高層住居専用地域不可
第1種住居地域可能
第2種住居地域可能
準住居地域可能
近隣商業地域可能
商業地域可能
準工業地域可能
工業地域不可
工業専用地域不可
旅館業法に基づいて民泊運営が行える用途地域
申請時に必要な書類
  • 登記事項証明書
  • 状況見取り図
  • 配置図・平面図
  • 構造設備の使用図
  • 仕様承諾書
  • 水質承諾書
  • 水質検査成績書
  • 土地・建物登記簿建物登記簿謄本
  • 検査済証
必要書類を事前に準備しましょう
メリット
デメリット
  • 年間営業日数制限無し
  • 対象地域が限られる
  • 要件を満たす必要がある

特区民泊

特区民泊とは、国家戦略特区において独自の民泊ルールが設定された民泊事業のことを指します。国家戦略特区は、日本政府が経済成長やイノベーションを促進するために設定した特定の地域で、さまざまな規制緩和や特別なルールが適用されています。

特区民泊は、国家戦略特区内でのみ適用されるルールであり、一般的な民泊(旅館業法や民泊新法に基づくもの)とは異なる要件や制限が設けられています。具体的には、以下のような特徴があります。

  1. 適用範囲: 特区民泊は、国家戦略特区内にある物件にのみ適用されます。特区内であれば、一般的な民泊に適用される地域制限や用途地域の制約が緩和されることがあります。
  2. 届出制: 特区民泊では、一般的な民泊と同様に、事業を開始する前に所在地の市区町村役場に届け出を行う必要があります。ただし、届出の要件や手続きは特区ごとに異なる場合がありますので、事前に確認が必要です。
  3. 運営要件: 特区民泊には、一般的な民泊とは異なる運営要件が設定されていることがあります。例えば、宿泊日数の制限が緩和されていたり、建物の構造や設備に関する要件が異なる場合があります。
  4. 税制上の優遇措置: 特区民泊では、税制上の優遇措置が適用されることがあります。具体的には、固定資産税の軽減や、所得税の特別控除などが適用される場合があります。

特区民泊を始める際には、国家戦略特区内であることを確認し、所在地の市区町村役場や専門家に相談して、適切な手続きを行うことが重要です。また、特区民泊のルールや要件は、特区ごとに異なる場合があるため、事業を始める前に十分な調査と準備が必要です。

特区民泊の対象地域

特区民泊の対象地域は、国家戦略特区内に限定されています。ただし、国家戦略特区は全国各地に設定されており、その範囲や適用されるルールは特区ごとに異なります。2021年9月時点での情報では、以下の地域が国家戦略特区に指定されています。

  1. 東京都(一部地域)
  2. 大阪府・兵庫県(関西イノベーション特区)
  3. 福岡県(福岡アジア特区)
  4. 沖縄県(沖縄モデル特区)
  5. 新潟県(新潟特区)
  6. 岡山県(岡山地域特区)
  7. 広島県(広島地域特区)
  8. 京都府(京都地域特区)
  9. 愛知県・三重県・岐阜県(中部地域特区)
  10. 北海道(北海道地域特区)

これらの特区内で特区民泊が許可されるかどうかは、各特区の条例やルールによって異なります。そのため、特定の地域で特区民泊を開始する場合は、所在地の市区町村役場や専門家に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。

また、特区民泊の対象地域やルールは、政策の変更や新たな特区の設定によって変わることがあります。事業を始める前に、最新の情報を確認し、適切な手続きを行うようにしましょう。

特区民泊の申請は、各自治体ごとに定められた窓口で認定申請を行います。

認定申請の流れは以下のとおりです。

  1. 保健所で事前相談を行う
  2. 消防所で消防設備に関する監督を受ける
  3. 保健所での相談内容、消防の監督をもとに物件を整備
  4. 消防設備の確認を消防署から受ける
  5. 必要書類を保健所に提出
  6. 認定
メリット
デメリット
  • 年間営業日数制限無し
  • フロントや用途変更の必要がない
  • 対象エリアに限られる

新法民泊

新法民泊(住宅宿泊事業法)は、2018年6月に施行された民泊事業に関する法律です。これにより、民泊事業に関する法的基準が明確になり、個人や事業者が安心して民泊を運営できるようになりました。新法民泊にはいくつかの要件やルールが設けられています。以下は、新法民泊に関する主なポイントです。

  1. 届け出制度: 新法民泊では、事業者は所在地の市区町村役場に民泊事業の届出を行う必要があります。届出を行った後、市区町村から受理されると、民泊事業を開始することができます。
  2. 運営期間の制限: 新法民泊においては、1つの物件での宿泊提供は年間最大180日までと制限されています。これを超える場合は、旅館業法に基づく許可が必要となります。
  3. 安全対策: 新法民泊では、事業者は火災報知器の設置緊急連絡先の掲示など、宿泊者の安全を確保するための対策を講じる必要があります。
  4. 周辺住民への配慮: 騒音やゴミの管理に関するルールを設けることで、周辺住民への迷惑を防ぐことが求められます。
  5. 宿泊者へのサービス: 清潔で快適な宿泊環境を整えることや、周辺情報の提供など、宿泊者に適切なサービスを提供することが求められます。

新法民泊は、民泊事業を適切に運営するためのルールや要件を明確にしたことで、事業者と宿泊者双方に安心感をもたらしています。新法民泊を運営する際には、これらのルールや要件を遵守し、宿泊者に快適な滞在を提供することが重要です。また、最新の情報や法令を随時確認し、適切な運営を行うようにしましょう。

メリット
デメリット
  • 形式的審査で営業スタートできる
  • 年間営業日数は180日以内

民泊事業の始め方

民泊ビジネスを始めるには、以下の基本手順を踏む必要があります

市場調査

まずは、ターゲットとなるエリアや客層を調査し、需要があるかどうか確認しましょう。

市場調査を行うことで、需要のあるエリアやターゲット顧客を特定し、適切なサービスや料金設定を決定することができます。以下に、市場調査について詳しく解説します。

  1. エリアの選定: 市場調査の初めに、どのエリアで民泊事業を展開するかを検討しましょう。観光地やビジネス街など、需要の高いエリアを選ぶことが成功への鍵です。また、特区民泊や新法民泊が認められている地域かどうかも調査しておく必要があります。
  2. ターゲット顧客の特定: 次に、民泊事業のターゲット顧客を特定します。例えば、外国人観光客やビジネス客、家族連れなど、どのような顧客層にアピールするかを決めましょう。ターゲット顧客のニーズや期待に応じたサービスを提供することが、リピーターや口コミに繋がります。
  3. 競合分析: 同じエリアの民泊事業や宿泊施設を調査し、競合状況を把握しましょう。料金設定やサービス内容、口コミ評価などを比較して、自分の民泊事業がどのような強みを持つことができるかを検討します。
  4. 需要予測: エリアの観光需要やイベント情報、季節ごとの需要変動などを調査し、宿泊施設の利用率や収益予測を立てましょう。これにより、適切な料金設定やプロモーション戦略を策定することができます。
  5. 法規制の確認: 民泊事業を行う上での法規制や届け出手続きを確認しましょう。旅館業法や住宅宿泊事業法(新法民泊)などの関連法規を把握し、適切な手続きを行うことが重要です。

物件選定

民泊事業を始めるにあたって、物件選定は非常に重要な要素です。物件選定に関しては以下のポイントを考慮して選ぶと良いでしょう。

  1. 法令遵守 民泊事業を行うためには、住宅宿泊事業法などの法律に基づいて運営方法を決める必要があります。物件が法令に適合しているか確認してください。
  2. 場所 観光地や交通アクセスが良い場所にある物件を選ぶことで、宿泊客にとって魅力的な場所となります。
  3. 設備 民泊で宿泊客に提供するために、物件の設備を整えることが必要です。例えば、バスルームやキッチン、寝具、インターネット環境などを提供することが求められます。日本人や韓国人旅行者などには最新設備が好まれる傾向にありますが、欧米人などではあえて日本式の古い設備を体験してみたいというニーズもあるようです。
  4. 賃貸物件の場合 賃貸物件を利用する場合は、転貸可能かどうかを確認してください。また、オーナーとの契約内容についても慎重に確認しましょう。
  5. 初期費用 物件の初期費用を見積もることが重要です。すでに物件を所有している方の場合、数十万円から100万円程度の初期費用を見積もっておくことが推奨されています。

これらのポイントを考慮して、適切な物件を選定しましょう。

法律や手続き

民泊事業を行うには、法律に基づく届出が必要です。旅館業民泊(簡易宿所)、特区民泊、民泊新法(住宅宿泊事業法)それぞれ利用する法に基づいて、届出書の作成や添付書類の準備を行いましょう

部屋の準備

民泊事業を始めるにあたって、部屋の準備は非常に重要なステップです。以下のポイントに注意しながら部屋を整えましょう。

  1. 必要な家具や設備を揃える 民泊に適した家具や設備を揃えることが重要です。例えば、ベッド、テーブル、椅子、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などが必要です。また、インターネット環境やテレビも用意しましょう。
  2. 清潔で快適な環境を提供する 宿泊客が快適に過ごせるように、清潔で綺麗な環境を整えることが重要です。部屋をきれいに掃除し、寝具やタオルなどのリネン類も清潔に保ちましょう。
  3. ウェルカムガイドの準備 民泊は海外の方の利用率が高いため、ウェルカムガイドは以下の言語に対応させるのが重要です。日本語、英語、中国語(簡体・繁体)、韓国語に対応したガイドを用意しましょう[5]。海外の方でも快適に過ごせるように、文化の違いを理解した上で作成しましょう。
  4. 安全対策 民泊施設の安全対策も重要です。火災報知器や消火器を設置し、緊急時の避難経路を明確に示した地図も用意しておくと良いでしょう。
  5. 騒音対策など近隣への配慮も必要です。夜間の騒音で近隣から苦情を受けないため利用規約への掲載はもちろん、室内への表示や、騒音を測定する装置の設置などを検討するのも良いでしょう。

これらのポイントに注意しながら、部屋の準備を進めていくことで、成功する民泊事業を立ち上げることができます。

予約管理・運営

民泊運営には、予約管理や清掃業務などが含まれます。これら全てをご自身で行うのも良いでしょう。
しかし民泊を開始する物件がご自宅から離れていたり、ご自身が時間が取れない時の対応等、やはり第3者の協力を得ることを念頭に置いて始める事をおすすめします。

実際に民泊を行うにあたり、物件準備と設備の準備を行えた上で運用を行うにあたり下記の作業が必要になります。

  • 予約プラットフォームへの掲載
    • 物件の登録
    • プランの登録
    • 在庫管理
  • 予約者とのカスタマーサポート
    • 問い合わせ対応
    • 鍵の受渡(電子キーのパスワード告知など)
  • 宿泊後の清掃作業
    • 前日宿泊者の退去後、速やかに制作作業が必要
  • リネンの回収と新しいリネンの設置

これらを全てご自身で行うのは現実的にはかなり大変な労力を要しますし、ITスキルや集客を増やす為のノウハウなども必要になります。

これらの民泊運営に必要なサービスを代行する会社も増えていますので、こういったサービスを利用することも事前に検討することをおすすめします。
当然これらのサービスにはコストが発生しますので、民泊を運営する上でこれらのコストも考慮した事業計画を作成しましょう。

民泊運営の成功ポイント

民泊運営で成功するためには、以下のポイントに注意しましょう。

  1. ゲストとのコミュニケーション ゲストとのコミュニケーションが重要です。迅速かつ丁寧な対応で、ゲストの信頼を得ましょう。
  2. 施設の清潔さ・快適さ 清潔で快適な部屋を提供することで、リピーターや口コミによる集客が期待できます。
  3. サービスの工夫 他の民泊と差別化するために、独自のサービスやアメニティを提供しましょう。
  4. 適切な価格設定 適切な価格設定で、利益を最大化しつつ、競争力を保つことが重要です。

法律や手続きについての注意点

民泊事業には、以下の法律や手続きに関する注意点があります。

  • 適用される法律はスタイルにより異なる 民泊のスタイルによって、適用される法律が異なります。自分の事業スタイルに合った法律を確認しましょう。
  • 賃貸の場合は転貸可能か確認を 賃貸物件を利用する場合、転貸が可能かどうか事前に確認が必要です。
  • 届出書の作成、提出先、提出方法に注意 民泊新法に基づく届出には、正確な届出書の作成や提出先・提出方法の確認が重要です。

まとめ

民泊ビジネスは、適切な手順とポイントを押さえることで成功する可能性が高まります。市場調査や物件選定、法律や手続きについての理解が不可欠です。また、ゲストとのコミュニケーションや施設の清潔さ・快適さ、サービスの工夫なども大切です。この記事を参考に、民泊ビジネスに挑戦してみましょう。